ニシノジャパン(19)改めて「コンパクト」の解説  文科系 - 九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

 パラグアイ戦において、代表がとうとう鮮やかな復活を遂げた。ロシア大会寸前にして、待ちに待った「自分らに最も合った戦い方」を見つけたのである。この「戦い方」のキー概念である標記の事を、今日、解説してみたい。W杯観戦をより面白くするために。

 ちなみに、サッカーが野球と一番違う点は、個人技能よりも組織の大切さ。組織が判らなければサッカーは理解できない。サッカーには、野球のように相手を1得点に抑えるエースや1人でホームラン得点を奪う4番バッターはいない。ロナウドでさえ、身方の助けがなければ1得点も挙げられないのである。

 さて、代表復活の内容は、第17回エントリーの「パラグアイ戦への希望」でここに書いた以下の箇条書きの通りのことが実現したということ。

【? 苦手な押し上げたコンパクト守備を必要な時に敷けることが、大前提。リトリート防御布陣を多くとっても、例えば後半の後半にこれができなければまた負けるだろう。・・・・

? 得点戦略については、ラインを上げたコンパクト・プレスを前提として、サイド攻撃や抜け出し狙いということになる。今の日本の実力では中央突破などは疲れるだけでなくカウンター失点の原因になるのだから、ライン押し上げができなくなる理屈。これがスイス戦の敗戦原因と観て良いほどだ。】

 これらが、18回で観た通りにパラグアイ戦で貫かれたからこそ、勝利を収められたのだった。キーワードはたった一言「コンパクト」の自分らに合った実践。

 コンパクトとは、コンパクトカーのコンパクトで、「小さい中に中身がぎっしり詰まっている」という意味。サッカー用語ではこれをこういう守備組織に遣う。ディフェンスがラインを上げてFWラインとの間を縦に詰めて狭くした空間に選手がぎっしり詰まった組織状態。そういう状態で、相手ボールに圧力(プレス、プレッシャー)をかけて、ボールを奪いやすくするという戦術である。よくコンパクト・プレスと語られるが、身方が狭い範囲に密集して敵ボールを奪うために圧力を掛けていく事を指している。

 このやり方は、こんな目的、意味を持っている。身方陣地方面にこの陣を敷いて成功すれば、敵を身方ゴールに近づけないことになるのだし、敵陣地近くにこの陣を敷いて敵ボールを奪えれば得点に結びつきやすくなるなどである。だからこそ、現代サッカーの試合光景はこんな場面が多くなる。

?コンパクト陣形のボール奪取力に差があるチームが戦う時、片方が一方的に相手を押し込む場面も多くなる。一方がほとんど敵陣で戦っているように見えるゲーム、場合がそれであって、相手はカウンターを狙うしか無いという状態になっているわけだ。ただしこの場合でも、押し込まれたチームが弱いとか、必ず負けるということではない。モウリーニョのようにゴール前の守り方とカウンター戦法の指導に秀でた監督は、相手によってはわざと押し込ませてカウンター得点を狙う場合もあるからだ。このモウリーニョインテル時代に、チャンピオンズリーグバルサを負かした時、ボールキープ率2割などということもあった。

?コンパクト陣形作りで力量互角の両者が戦う時は、こんな場面が最も多くなる。中央のラインを挟んで敵味方が縦30メートルもない空間にひしめき合っている光景。熾烈なボール奪取闘争を繰り広げているわけだが、これが次第に一方に傾いていく時には、?の光景に近づいているわけだ。この変化はよく見ていれば誰にも判ることだから、面白い。一方が次第に優勢になっていることは、ボールへの寄せの速さ、その人数の多さ、キープ率の高さなどとなって顕れてくる。コンパクトプレス合戦で優勢なチームは、その密集陣形がそのままショートパスを繋いで敵ゴールに押し寄せる陣形にもなっていく。

?なお、DFラインを上げあう戦いでは、相手FWが抜けだしたカウンター得点狙いへの対策が必須事項になる。その1つが、オフサイドトラップ。横にダッシュして弾みを付けておいて瞬間的に縦に抜け出そうとする敵FWなどをオフサイドにかけるべく、身方DFラインが駆け引きするわけだ。敵が後方からパスを出す瞬間にラインをすーっと上げてFWを後ろに残したり、身方一人が後ろ目に残っていて、敵が彼を出し抜くそぶりを見せる寸前に上がるなど。そしてもう一つの対策がゴールキーパーの守備範囲の拡大。前に出て来て、敵の長いカウンターボールを防止する役割も生まれた。ブラジル大会のドイツが開催国を7対1で負かした場面を思い出して頂きたい。ドイツのキーパー、ノイアーのまるでフィールドの身方側半分を守っているような、あの光景!

 さて、実際のゲーム中にフィールド真横に出た監督がよく、両手の平を広げて大きくふわふわの風船を抑えるような身振りをしたり、前にのばした片腕を敵ゴール側へと横に平行移動させたりなどしてなにか叫んでいることがあるが、あれは「もっとコンパクトにせんかい!」と命じているのである。ボール奪取に劣勢の自チームを叱咤激励しているわけだ。